この記事のポイント(要約)
- エンリッチドエアとは:通常の空気よりも酸素濃度を高めた混合気体のこと。
- 最大のメリット:体内に溜まる窒素が少ないため、減圧症のリスクを軽減できる。
- 潜水時間の延長:「無限圧潜水時間(NDL)」が延び、水中での撮影や観察を長く楽しめる。
- 取得方法:最短1日のスペシャルティ(SP)講習を受けるだけで、誰でも利用可能。
エンリッチドエア・ナイトロックスとは?定義と空気との違いを解説
最近、日本で急速に浸透してきているエンリッチドエア・ナイトロックス。
海でよく目にするようになったけど、いまいちよくわからないダイバーの方も多いかと思います。
PADI エンリッチドエア賞 受賞店のインストラクターが、安全性と生理学的な視点からこのナイトロックスの利点を解説します。
そもそもエンリッチドエア・ナイトロックスとは、なんでしょう?
よく混同されがちな言葉ですが、「ナイトロックス」とは窒素(Nitrogen)と酸素(Oxygen)の混合気体を意味します。「Nitrogen」と「Oxygen」を合わせて作られた造語が「Nitrox」なんです。
混合の割合に関係なく窒素、酸素の混合気体すべてがナイトロックスですから、私たちが吸っている大気もある意味「ナイトロックス」です。そして「エンリッチドエア」は直訳すると「豊富なエア」という意味ですので、「エンリッチドエア・ナイトロックス」とは、通常の大気より酸素パーセンテージが高いナイトロックスを意味するのです。つまり、通常の空気(酸素21%)よりも酸素濃度を高くした(22%〜40%)混合気体になります。一般ダイバーが特に使用するのは 酸素濃度が32%もしくは36%のガスになります。
逆にテクニカルダイブでは、酸素濃度が21%未満のナイトロックス・ガスを使用することがあります。それは「エンリッチドエア」ではないので、レジャーダイビングで使用される「エンリッチドエア・ナイトロックス」と区別されるわけです。
和歌山県・白浜町の海でも、近年では多くのダイバーがエンリッチドエアを選択しており、ダイブサプライではエンリッチ専用シリンダーを常時完備しています。当店のゲストの95%はエンリッチドエア・ナイトロックスを利用されてます。

ナイトロックスで潜るメリット:なぜ安全性が高まるのか?
医学的にみた利点
- 通常の空気より窒素の割合が少ないガスを吸うのですから、ダイビング後に体内に残留する窒素は明らかに減少します。空気でのダイビングと同じ時間、同じ深度に潜る場合、明らかに減圧症にかかるリスクは減少します。
- ダイバーには個人差があり、減圧症にかかりやすい因子を持つダイバーがいます。そういった因子を持つダイバーは通常より窒素の排出が遅れる可能性がありますので、エンリッチドエアを使うメリットは非常に高いです
減圧症にかかりやすい因子を持つダイバーとは・・・
- 喫煙するダイバー
- 肥満のダイバー
- 高齢のダイバー
- 卵円孔開存のあるダイバー
ダイブプラン上の利点
- 空気を使うダイビングと同じダイブプランの場合、ナイトロックスを使ったほうが無限圧潜水時間が飛躍的に長くなる、ということです。そして、水面休息時間も短くすることが可能です。
- 空気の設定でダイブテーブルやダイブコンピュータを使用時に、空気の代わりにナイトロックスを使用することで、より安全に潜ることができます。空気の減圧不要限界を守ることで、かなりの安全マージンを得ることができるわけです。
- ナイトロックスを使用した場合、体内に溶け込んでる窒素がAIRより少ないので、飛行機搭乗のリスクも減らすことが可能です。
空気とエンリッチドエア(ナイトロックス)の比較
| 比較項目 | 通常の空気 | エンリッチドエア |
|---|---|---|
| 酸素濃度 | 21% | 22%〜40%(一般的には32%、36%) |
| 減圧症リスク | 標準 | 低い(窒素蓄積が少ないため) |
| 最大潜水時間 | 標準 | 長い(特に水深15m〜25m付近) |
| 体への負担 | 標準 | 疲れにくい(ダイバーの多くが実感) |
知っておくべきデメリットと注意点:最大深度(MOD)の制限
- 最大深度を守らない場合、酸素中毒の危険性
- 地域によって専用の機材が必要な場合がある
- AIRに比べるとやや高価エンリッチドエア・ナイトロックスをオススメしたい人
メリットがかなり大きなナイトロックス。正直、すべてのダイバーにお勧めしたいです。
もし入手でき費用の面も許容されるなら、すべてのダイビングに使用したいところですが、地域によってまだ高額なところもあるので、その場合は最後のダイビングに使用するのがお勧めです。
1日に3,4本潜る場合は、最終ダイブに絶対使用してほしいです・・・
特にお勧めしたいダイバーは・・・
- 1ダイブで長時間水中に居るフォトダイバー
- 翌日飛行機に搭乗する時間がギリギリなダイバー
- クルーズ船やリゾートで1日に3ダイブ以上潜るダイバー
- 連日にわたって複数回の潜水を行うダイバー
- シニアダイバーの方
よくある質問(FAQ)
Q: エンリッチドエアを使うと深く潜れますか?
A: いいえ。酸素濃度が高いため、酸素中毒のリスクを避けるために最大水深は通常の空気シリンダーより浅く制限されます。安全な深度を守ることが重要です。
Q: ライセンスを持っていない体験ダイビングでも使えますか?
A: 原則として専用の講習(PADIエンリッチド・エア・スペシャルティ)を受けたダイバーのみが使用できます。まずは講習の受講をおすすめします。
Q: 1日何本まで潜る場合に効果的ですか?
A: 特に1日3本以上潜る場合や、連日ダイビングを続ける場合に、体内に蓄積される窒素を大幅に抑えることができるため、非常に効果的です。1日2ダイブの潜水や間の休憩時間が短い場合にも抜群の効果を発揮します。
「この記事の監修:PADIインストラクター 樋下祥一」
「2026年最新版」







